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今回の構造計算書偽造事件は、建築設計に携わる者にとって、非情に腹立たしいと共に、やはりあったか!
という思いがあります。いくつかの観点で整理してみます。
姉歯設計士の問題
専門家として有るまじき行為であることは、否定できません。
最初は、一人の構造設計士の密かな、魔がさしたといえるような企みでしかなかったのだと思います。
必ず確認申請で見つかるはずだが、取引先のプレッシャーと膨大な仕事量に忙殺される中で、ちょっとやってみようと。
それが通ってしまった。
本人も通るはずないものが通ってしまったのでびっくりした、と言っています。
私にも似たような経験があるので、その経緯は容易に想像がつきます。
ここで第1の回避ポイント。姉歯は、そこで自己申告して訂正すればよかったのです。
倫理観が働けばこの時点で終わっていたはずです。
姉歯本人は、テレビで見る限り、素朴で善良な人間に見えます。悪いことをして金儲けをしようなどと、大それた企みがあったとは思えません。
姉歯には、設計士としての社会的責任感が欠けていたと同時に、人間としての社会性も欠如しているのでしょう。
予断ですが、姉歯の容姿が宮崎勉と重なって、背筋に冷たいものを感じたのは私だけでしょうか。
元受設計事務所の問題
実は私がこの立場なのですが、少し意外な感じがしています。
それは、この構図の中で一番責任が重いと思っていたからです。
これからの追求があるのかもしれませんが、私自身は請負階係に関わりなく、一番責任を追及される立場なのだと自身に言い聞かせてきました。
しかも、報道にあるとおり、柱梁のサイズや配筋量が1階から10階まで同じなどいうのは、一目瞭然で、と解らなかったで通るはずがありません。
多少の実務を経験したものであれば、ほとんどの設計技術者はおかしいと思うはずです。
ここが第2の回避ポイント。姉歯が紹介された構造設計であれば尚更、そこでキッパリと弾劾すべきだったのです。
ここに姉歯よりも腹黒さを感じます。
一人の自殺者が出てますが、当然であろうと思います。
民間審査会社および行政審査の問題
ここは審査体制上の問題(人手不足、時間短縮要求など)よりも、危機対応能力といか危機対処能力というか、偽造のリークなり
風評があった際の対応が不味かったのではないでしょうか。
第3の回避ポイントは、検査機関のより速い発見と対応です。
私も以前に異常に柱梁メンバーの小さい図面を見せられて、経済設計を要求された記憶があります。
その時は、何か特殊な計算があるのかな、などと偽造を疑いませんでした。それは確認申請を通ったという事実があったからです。
それほど、確認申請は絶対視されていました。
民間参入で、審査時間が短くなりましたが、私自身は、審査の中で計算書のミスを是正させられた経験があるので、審査自体が
甘くなったという実感はありませんでした。
たぶん大分前より審査機関には、情報が入っていたのではないかと思います。普通の構造設計士が姉歯の設計を見せられれば
すぐ気づいたはずです。
今後、この問題も広がっていくでしょう。
建設会社の問題
第4の回避ポイントは、工事現場からの告発です。
職人は、仕事を体で覚えているので、鉄筋量が異常に少ないことをより速く感じたはずです。
それ以前の施工図の段階で、現場員たちはおかしいと思ったはずです。
建設会社は解っていたはずなのです。解らなかったら建築の専門家ではありません。
本当のところは、うすうす知りながら、たまたま確認も通ってしまったし、施主のコスト要求も厳しいので、いざとなったら
設計のセンセーに責任とってもらいましょう、というところでしょう。
ここは組織の悪いところで、立場立場で少しづつ責任を他へ押し付けています。現場監督は、あるいは上へ具申していたかもしれません。
経営サイドでは、コスト対応のためバレナケレバと聞こえないふりをしていたのではないか。
私の経験では、建設会社は比較的倫理観が低いようです。そこを担保するのが、設計事務所の倫理観だと思っています。
ディベロッパーの問題
ディベロッパーは不動産屋と建設会社の中間のような存在で、巧妙に開発された不動産システム商売です。
今回一見被害者のような立場ですが、この事件を誘発させた責任は大きいでしょう。
マンション事業というのは、土地購入の時点で事業計画を立てなければなりません。その時点で、基本設計、工事概算見積りがなければならないのです。
部屋の広さは、戸数は、何階は、向きは、駐車場は、などが分からなければならないし、工事の概算見積りは、想定で入れるので、
安全みて高めに出すのが普通ですが、結局はディベロッパーにこの値段で出来るかと談判されるのが常です。
そこで無理して受けてしまったのが、今回の施工会社でしょう。
ディベロッパーの社会的責任として、コスト削減たいするリスク回避の責務が生じることは当然でしょう。
第5の回避ポイントは、ディベロッパーのリスク回避の責務です。
結局は、すべての関係者の倫理観の欠如です。
H17.12.2
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